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個人・組織成長に必要なマインドセット『ローカスオブコントロール』とは?

ビジネス環境の激変に伴い、企業の成功に不可欠な要素として人的資本の重要性がますます高まっています。デジタル化やグローバル化が加速する現代において、従業員一人ひとりのエンゲージメントが企業の競争力を左右することは言うまでもありません。

特に、自律的に成長し、主体的に業務に取り組む人材の育成が、企業の持続的な成長に不可欠となっています。


このような状況下で、従業員が自律性を高め、主体的に行動することが求められています。そして、その実現に不可欠な要素として注目されているのが、「ローカス・オブ・コントロール(LOC)」です。LOCとは、個人が自身の行動や成果を、どれだけ自分がコントロールできると感じているかを示す概念であり、個人と組織の双方に大きな影響を与えます。
本記事では、LOCの基礎概念から、それが企業にどのような影響を与えるのか、そして、従業員のLOCを高めるための具体的な方法までを解説します。

目次[非表示]

  1. 1.ローカスオブコントロールとは?
    1. 1.1.自責思考と他責思考との関連性
    2. 1.2.ビジネスシーンでの実例
  2. 2.LOCが高い人と低い人の特徴
    1. 2.1.内的LOCが高い人の特徴
    2. 2.2.外的LOCが高い人の特徴
  3. 3.LOCの組織への影響
    1. 3.1.生産性の向上
    2. 3.2.モチベーション
    3. 3.3.メンタルヘルス
  4. 4.内的LOCを高めることのメリット
    1. 4.1.個人の成長
    2. 4.2.組織のエンゲージメント
  5. 5.内的LOCを高めるための具体的な方法
    1. 5.1.自己認識(セルフアウェアネス)の強化
    2. 5.2.フィードバックの積極的な活用
    3. 5.3.目標設定と達成のプロセス
  6. 6.LOCのバランスの重要性
    1. 6.1.内的LOCが強すぎる場合
    2. 6.2.外的LOCが強すぎる場合
    3. 6.3.理想的なLOCのバランス
  7. 7.日本人の特性とLOC
  8. 8.マネジメントや人材育成におけるLOCの活用
  9. 9.LOCセルフチェックシート
  10. 10.ローカスオブコントロール(LOC)を高め、自分と組織を成長させよう!

ローカスオブコントロールとは?

ローカスオブコントロール(LOC)とは、心理学者ジュリアン・ロッターによって提唱された概念で、個人が自身の人生や結果に対してどの程度コントロールできると感じているかを示します。LOCは、大きく「内的LOC」と「外的LOC」に分けられます。


1.内的LOC

 内的LOCを持つ人は、自分自身の行動や努力が結果を左右すると信じています。彼らは、成功や失敗を自分の努力や選択に帰属させる傾向があり、そのために積極的に行動し、結果を変える力があると感じます。


2.外的LOC

外的LOCを持つ人は、結果は運や他人の影響によるものと考えます。彼らは、外部要因に責任を転嫁しやすく、自己の行動が結果に与える影響を小さく見積もる傾向があります。
この違いは、個人のモチベーションや問題解決能力、さらにはストレス対処法にも大きく影響を与えます。

自責思考と他責思考との関連性

自責思考と他責思考は、それぞれ内的LOCと外的LOCに対応しています。
 
1.自責思考(内的LOC)

自責思考の人は、自分の行動や判断が結果に影響を与えると考えます。彼らは、失敗してもその原因を自分に見出し、改善策を模索します。この思考は、主体的な行動や自己効力感の向上に寄与します。

2.他責思考(外的LOC)

 他責思考の人は、結果を他人や環境のせいにしがちです。彼らは、自分が結果に対して影響を及ぼすことができないと感じ、受け身の姿勢を取りやすくなります。この思考は、モチベーションの低下や生産性の減退につながる可能性があります。

ビジネスシーンでの実例

▽営業場面

【内的LOCの例】
営業担当Aは、新しい製品を顧客に提案しました。その結果、契約が成立しました。このとき、内的LOCが強い営業担当Aは次のように考えます。
「この契約が成立したのは、事前に顧客のニーズをしっかりと把握し、そのニーズに最適な提案をしたからだ。自分の準備と努力が結果に結びついた。」
内的LOCが強い人は、この成功体験を基に、さらに自分のスキルやアプローチを改善しようとします。「次回も、この成功を再現できるように、もっと顧客のニーズを深掘りしよう」という意識が生まれます。

【外的LOCの例】

一方で、外的LOCが強い営業担当者Bが同じ状況で考えることは下記の通りです。
「この契約が取れたのは、顧客がたまたま今すぐにこの製品が必要だったからで、自分が特別に何かしたわけじゃない。運が良かっただけだ。」
外的LOCが強い人は、成功を外部要因に帰属させるため、次回の営業に対しても「どうせ運次第だろう」と考え、努力や準備が疎かになりがちです。この結果、成功の再現性が低くなります。

▽目標達成プロセスの場面

【内的LOCの例】

Aはチームリーダーとして、上層部から非常に高い目標を設定されました。この目標は、達成が極めて困難であり、チーム全員がプレッシャーを感じています。

内的LOCが強いリーダーは、次のように考えます。

「確かに、この目標は非常に高いし、すべてを達成するのは難しいかもしれない。しかし、私たちが自分たちの行動の影響範囲をしっかりと見極め、その中でベストを尽くすことが重要だ。例えば、目標達成のためにどんな具体的なアクションを取るべきか、また、途中経過で得られる学びを次にどう活かすかを考えよう。」

このリーダーは、目標が高すぎることに対して不平を言うのではなく、その状況を前向きに捉えます。そして、チームの行動にフォーカスし、最善を尽くすための戦略を立てます。また、達成できなかったとしても、そこで得た経験や知識を次のプロジェクトに活かすために積極的に分析を行い、次にどうつなげるかを考えます。

結果的に、チームは目標に近づくための最大限の努力をし、その過程で成長し、今後のプロジェクトでの成功につなげることができます。

【外的LOCの例】

一方で、同じ状況で外的LOCが強いリーダーBは次のように考えます。

「この目標は、最初から無理がある。達成できないのは私たちのせいじゃなく、上層部が非現実的な期待をしているからだ。どんなに頑張っても、結局は達成できないんだから、無駄な努力をしても意味がない。」

このリーダーは、目標が高すぎると感じると、自分たちの努力が無駄になると考えます。そして、チームの努力や工夫を放棄し、目標達成を諦めてしまいます。この結果、チームのモチベーションも低下し、実際の成果も出にくくなります。

LOCが高い人と低い人の特徴

内的LOCが高い人の特徴

内的LOCが高い人は、次のような特徴を持っています。

▽自己効力感が高い

 自分の行動が結果に影響を与えると強く信じているため、自己効力感が高く、チャレンジ精神旺盛です。

▽問題解決能力に優れる

 困難に直面しても、それを乗り越えるための解決策を自ら模索し、実行します。

▽メンタルヘルスが良好

内的LOCを持つ人は、ストレス対処能力が高く、プレッシャーに対しても強く、精神的な安定を保ちやすいです。

積極的なアプローチ: 仕事に対して前向きに取り組み、自分がコントロールできる範囲で最大限の結果を出そうとします。

外的LOCが高い人の特徴

他人や環境に責任を転嫁する: 自分の行動が結果に影響を与えないと感じるため、結果が悪かった場合、他人や外部環境に責任を転嫁しがちです。

▽受け身の姿勢

物事に対して積極的に取り組むことが少なく、変化に対しても消極的な態度を取ることが多いです。

▽モチベーションが低下しやすい

外的要因に結果を依存するため、自分でコントロールできない状況が続くと、モチベーションが低下しやすくなります。

▽生産性が低下しがち

自分の行動に対する責任感が薄いため、結果的に仕事の生産性も低くなる傾向があります。

LOCの組織への影響

生産性の向上

内的LOCが高い従業員は、高い自己効力感に基づき、自ら問題解決に積極的に取り組むため、組織全体の生産性向上に大きく貢献します。 彼らは、問題発生時にも能動的に解決策を模索し、迅速な意思決定を可能にします。外部要因に頼らず、自律的に行動するため、組織の柔軟性と適応力を高める効果も期待できます。

モチベーション

内的LOCを持つ従業員は、自身の成長を自ら作り出すという強い信念を持っているため、高いモチベーションを維持できます。 組織への貢献度を自覚し、その成果を実感することで、より大きなやりがいを見出し、高いエンゲージメントへと繋がります。

一方、外的LOCが高い従業員は、外部要因に成功や失敗の原因を求めがちであり、モチベーションの低下や、組織への貢献意欲の減退に繋がりやすい傾向があります。

メンタルヘルス

内的LOCが高い従業員は、困難な状況においても、自己効力感に基づき、問題解決に向けて積極的に行動するため、ストレス耐性が高く、メンタルヘルスが良好である傾向にあります。

自らで状況をコントロールできると感じているため、ストレスフルな状況下でも冷静さを保ち、心の安定を保つことができます。

 一方、外的LOCが高い従業員は、自分ではコントロールできない要因に振り回されやすく、ストレスを感じやすい傾向にあります。長期的に見ると、バーンアウトや離職といった問題に繋がる可能性も考えられます。

内的LOCを高めることのメリット

個人の成長

内的LOCが高い従業員は、自己効力感が高まることで、積極的に新たな課題や困難に挑戦し、自己成長を加速させます。 これにより、専門知識の幅を広げ、スキルアップを図ることが可能となり、結果として個人のキャリア開発に大きく貢献します。

 従業員の成長は、組織全体の活性化にも繋がり、組織の持続的な発展を支える重要な要素となります。

組織のエンゲージメント

内的LOCが高い従業員は、組織への帰属意識が高く、主体的に業務に取り組む傾向にあります。 自らの行動が組織に貢献しているという実感を持つことで、高い従業員エンゲージメントを実現し、組織全体の活性化に繋がります。

主体的な従業員が増えることで、組織内のコミュニケーションが円滑になり、相互協力体制が強化され、結果として組織全体の生産性向上に貢献します。

内的LOCを高めるための具体的な方法

自己認識(セルフアウェアネス)の強化

内的LOCを高めるためには、自己認識(セルフアウェアネス) を強化することが不可欠です。自己認識とは、自身の行動、思考、感情、そしてそれらがどのように結果に影響を与えるかを深く理解する能力です。 日々の業務において、成功体験や失敗体験を客観的に振り返り、その原因を分析することで、自己認識は深まります。

特に、自分の強み、弱み、価値観を明確にすることは、自己理解を深める上で非常に重要です。

フィードバックの積極的な活用

フィードバックは、自己認識を深め、内的LOCを高めるための強力なツールです。上司や同僚からのフィードバックを積極的に受け入れ、それらを客観的に分析することで、自身の行動を改善し、成長へと繋げることができます。フィードバックを受け入れる際には、防衛的な姿勢ではなく、成長の機会として捉えることが重要です。また、自分自身に対しても、定期的に自己評価を行い、客観的な視点から自身の行動を振り返る習慣を身につけることが大切です。

□■フィードバックをする側のポイント■□

▽具体性

抽象的な表現ではなく、「具体的にどのような行動が良かった/悪かったのか」を明確にする。

▽建設性

批判的な意見だけでなく、改善点と合わせて、その人の強みや伸ばすべき点を伝える。

▽タイミング

フィードバックを受ける人が最も受け入れやすいタイミングを選ぶ。

▽双方向性

一方的な意見伝達ではなく、フィードバックを受けた側の意見や考えも聞く。

▽継続性

一度きりのフィードバックではなく、定期的にフィードバックの機会を設ける。

【効果的なフィードバックの例】

「前回のプレゼンテーションでは、資料の構成が分かりやすくて良かったです。特に、データの視覚化が効果的で説得力があったように感じました。ただ、少し話すスピードが速かったため、もう少しゆっくり話してもらえれば、聴衆の理解度を向上させれたように思います。」

「最近、チームへの貢献度が非常に高まっています。特に、新しいアイデアを積極的に提案している点が素晴らしいと私は感じています。今後は、周囲の意見もとり入れながら、より良いアイデアを生み出せるように心がけてみてください。」

目標設定と達成のプロセス

明確な目標を設定し、その達成に向けて積極的に行動することは、内的LOCを高める上で非常に効果的です。 目標は、達成可能でありながらも、同時にある程度の挑戦性を含むものでなければなりません。

目標達成に向けて、具体的な行動計画を立て、定期的に進捗状況を確認することで、自己効力感が高まり、モチベーションを維持することができます。

また、目標達成の過程で直面する困難を乗り越えることで、自己成長を実感し、さらなる挑戦へと繋げることができます。

LOCのバランスの重要性

これまで、内的LOCと外的LOCのそれぞれの特徴や、組織への影響、内的LOCを高める方法について見てきました。しかし、LOCはどちらか一方に極端になるのではなく、バランスが非常に重要です。

内的LOCが強すぎる場合

メリット: 主体性が高く、目標達成に向けて積極的に行動できる。

デメリット: 責任感が強すぎて、バーンアウトやメンタルヘルスの問題に繋がりやすい。

また、変化に対応するのが苦手で、頑固な印象を与えがち。

外的LOCが強すぎる場合

メリット: 周囲との協調性が高く、柔軟な対応ができる。

デメリット: 主体性が不足し、目標達成が難しい。

また、責任転嫁をしがちで、信頼を失う可能性がある。

理想的なLOCのバランス

理想的なLOCは、状況に応じて内的LOCと外的LOCを使い分けることができる状態です。例えば、新しいプロジェクトを始める際には内的LOCを発揮し、主体的に目標を設定し、達成に向けて努力します。一方で、チームで協力して問題解決を行う際には、外的要因も考慮し、柔軟な対応を心がけます。

日本人の特性とLOC

日本人は、一般的に真面目で規律性が高く、集団主義的な傾向があります。これらの国民性は、内的LOCを強める方向に働きがちです。しかし、一方で、責任感の強さから、完璧主義に陥ったり、周囲の目を気にしすぎて自分自身を追い込んでしまう傾向も見られます。

日本人のLOCの特性

▽メリット

目標達成に向けて粘り強く努力できる。

高い品質の製品やサービスを提供できる。

組織への帰属意識が高い。

▽デメリット

変化を恐れ、新しいことに挑戦しにくい。

責任感の強さから、バーンアウトやメンタルダウンを起こすリスクも。

過度な自己抑制により、個性を発揮できない。

マネジメントや人材育成におけるLOCの活用

組織のリーダーは、従業員のLOCの特性を理解し、それぞれに合った指導を行うことが重要です。

▽内的LOCが高いメンバー

・より高い目標を設定し、自己成長を促す。

・裁量権を与え、自主性を尊重する。

・メンタルヘルスへの配慮を怠らない。

▽外的LOCが高い従業員

・小さな成功体験を積み重ね、自己効力感を高める。

・周囲との協働を重視し、チームワークを促進する。

・目標を具体的に示し、達成感を味わえるようにする。

LOCセルフチェックシート

以下のセルフチェック質問は、あなたのローカスオブコントロール(LOC)が内的か外的かを簡易評価するためのものです。是非、お気軽にチェックし、自己認識を高めてみてください。


ローカスオブコントロール(LOC)を高め、自分と組織を成長させよう!

本記事では、LOCが個人と組織に与える影響、そしてLOCを高めるための具体的な方法について解説しました。

LOCとは? 自分自身の行動や成果を、どれだけ自分がコントロールできると感じているかを示す概念です。

内的LOC は、自己効力感が高く、積極的に行動するタイプ。

外的LOC は、外部要因に責任を転嫁しがちで、受け身のタイプ。

LOCを高めるには? 自己認識を深め、フィードバックを活用し、目標を設定し達成することが重要です。

あなたや組織・チームのメンバーは、内的LOC・外的LOCのいずれの傾向が多いでしょうか?

LOCを高めることで、個人・組織には大きな変化が期待できます。

・自己成長 ▶ 新しいことに挑戦し、スキルアップできる

・モチベーションアップ ▶ 目標達成の喜びを感じられる

・ストレス軽減 ▶ 問題解決能力が向上する

・組織貢献 ▶ チームワークが円滑になり、生産性が向上する

LOCを高めることは、個人の人生をより豊かにし、組織力、生産性向上の第一歩です。 この記事が皆様自身、そして貴社、組織開発の一助となりましたら幸いです。

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