
激変する時代を勝ち抜く!人的資本経営時代の「行動変容」を促す人材育成と効果測定の全貌
現代のビジネス環境は、DXの加速、リスキリングの必要性、そして次世代リーダーの育成といった喫緊の課題に直面しており、企業の持続的成長には人的資本経営が不可欠です。2023年3月期決算からは上場企業に人的資本の情報開示が義務付けられ、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出す経営の重要性は増すばかりです。
しかし、多くの経営層や人事担当者の方々は、このような疑問を抱えているのではないでしょうか?
- 「人材育成に投資しているものの、効果が見えにくい…」
- 「研修を実施しても、現場で行動が変わらないのはなぜだろう?」
- 「育成コストが本当に成果に結びついているのか不透明で、追加投資に踏み切れない…」
HR総研の調査でも、「実施した研修の効果測定ができていない」という課題が多くの企業で顕在化しており、人材育成への投資対効果をどのように測るかは、まさに経営の最重要課題となっています。 本記事では、この「人材育成の効果測定」と「行動変容」に焦点を当て、激変する時代を勝ち抜くための人材育成の全貌を明らかにします。貴社の人材育成を戦略的な投資へと転換し、企業価値向上に繋げるための具体的なロードマップを、ぜひ本記事で見つけてください。
目次[非表示]
- 1.1.本質的な人材育成とは?〜体系化と「行動変容」設計の重要性〜
- 1.1.▼個別施策の限界と体系化の必要性
- 1.2.▼「行動変容」を促す研修設計のポイント
- 1.3.▼ノンテクニカルスキルの重要性
- 2.2.人材育成の効果測定と「見える化」
- 2.1.▼なぜ効果測定ができないのか?根本原因を考える
- 2.2.▼行動変容を可視化するデータ活用
- 2.3.▼「個人と組織」をつなぐフィードバックループ
- 2.4.▼人材育成のROIを算出し、経営層に報告する
- 3.3.成功事例と今後の展望
- 3.1.▼成功事例の類型
- 3.1.1.類型1:経営計画達成を目的とした育成強化
- 3.1.2.類型2:組織文化醸成とエンゲージメント向上
- 3.1.3.類型3:理念浸透による組織活性化
- 3.2.▼今後の展望
- 4.まとめ
1.本質的な人材育成とは?〜体系化と「行動変容」設計の重要性〜
単発的な研修では、その場限りの知識習得に留まり、真の行動変容や組織全体の変革には繋がりません。本質的な人材育成には、企業の経営戦略やビジョンに基づいた「体系的な教育プログラム」の構築が不可欠です。
▼個別施策の限界と体系化の必要性
人材育成が点ではなく線、そして面で捉えられるべきである理由は、個々の研修が有機的に連携し、長期的な視点で従業員の成長を支援する必要があるためです。例えば、新入社員研修で基本的なビジネスマナーを学んでも、それが日々の業務で実践され、上司や同僚との関係性の中で強化されなければ、単なる知識として終わってしまいます。
教育研修の体系化は、以下の3つの軸を起点に検討されることが推奨されます。
- 理念起点: 企業の理念・ビジョン・パーパスの体現を目的とした教育研修体系化です。最も抽象度の高い「Purpose(信念・理想・哲学)」から、具体的な行動指針である「Credo」まで、理念の機能レベルに合わせて教育研修を連動させます。
- 課題起点: 顕在化している組織課題の解決を目的とした教育研修体系化です。主に定性情報に基づき、現状の課題解決に特化したプログラムを設計します。
- 経営計画起点: 中長期的な経営計画の実現を目的とした教育研修体系化です。主に定量情報に基づき、経営目標達成に必要な人材要件を定義し、育成計画に落とし込みます。
▼「行動変容」を促す研修設計のポイント
研修の真の目的は、単なる知識付与に留まらず、現場での「行動変容」を促すことにあります。以下の要素を研修設計に組み込むことで、実践的な行動変容を支援します。
- 実践的な演習とアウトプット: 座学だけでなく、実際の業務を想定したロールプレイングやグループワーク、具体的な課題解決に向けたアウトプットを促すことで、知識を「使えるスキル」へと昇華させます。
- フィードバックのサイクル: 研修中に得られたアウトプットに対し、講師や受講者同士で具体的なフィードバックを行うことで、自身の行動を客観的に捉え、改善点を見つける機会を提供します。これにより、PDCAサイクルを回し、継続的な行動改善を促します。
- 行動の公式の考慮: 行動(Behavior)は、個人のパーソナリティ(Personality)と組織風土(Environment)の相互作用によって決定されるという「Behavior = Personality × Environment」の公式を考慮することが重要です。研修を通じて個人のパーソナリティを理解し、組織風土に働きかけることで、行動変容を促進します。
▼ノンテクニカルスキルの重要性
現代のビジネス環境において不可欠であり、行動変容を促す土台となるのがノンテクニカルスキルです。
- セルフアウェアネス: 自己理解を深め、自身の強みや弱み、価値観を認識することで、自律的なキャリア形成を支援します。
- 情報整理スキル: 複雑な情報を構造化し、効率的に処理する能力は、意思決定の質を高め、業務効率を向上させます。
- プレゼンテーション: 自身の考えを明確に伝え、相手を納得させる能力は、チーム内外での協業やリーダーシップの発揮に不可欠です。
- アクティブリスニング: 相手の言葉の裏にある意図や感情を理解し、共感的に傾聴する能力は、コミュニケーションの質を高め、心理的安全性の高い組織を築く上で極めて重要です。
- アサーション: 相手を尊重しつつ、自身の意見や要求を適切に伝える能力は、健全な人間関係の構築と、建設的な議論を促進します。
- コーチング: メンバーの潜在能力を引き出し、自律的な成長を支援するコーチングスキルは、次世代リーダー育成において不可欠です。
- チームビルディング: チームメンバー間の協力関係を構築し、チーム全体のパフォーマンスを最大化する能力は、プロジェクト推進や組織目標達成に貢献します。
- ファシリテーション: 会議や議論を円滑に進め、参加者全員の意見を引き出し、合意形成を促す能力は、多様な意見が飛び交う現代の組織において重要です。
- リーダーズマインド: リーダーとしての心構えや、チームを牽引するための基本的な知識を習得します。
これらのスキルは、ウェルビーイング、心理的安全性、テレワークといった現代の働く環境において、より一層その重要性を増しています。ノンテクニカルスキルを体系的に提供することで、従業員一人ひとりの自律的な成長と、組織全体のエンゲージメント向上を支援します。
2.人材育成の効果測定と「見える化」
人材育成の効果測定が難しいと感じる企業は少なくありません。その根本原因は、単なる技術不足だけでなく、「育成目標の不明確さ」や「経営層への説明責任の欠如」に起因することが多いです。これらの課題に対し、データ活用と効果測定の「見える化」を通じて、本質的な解決策を提供します。
▼なぜ効果測定ができないのか?根本原因を考える
多くの企業で人材育成の効果測定が難しいと感じる背景には、以下のような根本原因が潜んでいます。
- 育成目標の不明確さ: 研修を行うこと自体が目的となり、具体的な「誰に、何を、どう変わってほしいのか」という育成目標が曖昧なまま実施されているケースが散見されます。目標が不明確では、当然ながら効果測定の基準も設定できません。
- 経営層への説明責任の欠如: 人材育成への投資は、企業にとって大きなコストです。しかし、その投資が「どのように企業価値向上に貢献しているのか」を経営層に明確に説明できていないために、さらなる投資に繋がりくいという課題があります。
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行動変容の壁: 研修で得た知識やスキルが、実際の現場で活かされず、行動変容に繋がらないという壁に多くの企業が直面しています。これは、研修設計の問題だけでなく、個人の特性や組織風土といった要素も大きく影響しています。
▼行動変容を可視化するデータ活用
行動変容を可視化するためには、以下のデータ活用が有効です。
- 適性診断ツールの活用: 個人の強みや課題を定量的に可視化する適性診断ツールは、育成目標設定や効果測定のベースとなります。研修前後の診断結果の変化から、個人の成長や潜在的な行動変容の兆しをトラッキングできます。
- 研修アウトプットからのデータ抽出と活用: 研修中のワーク、ディスカッション、発表内容など、受講生から得られる定性・定量データを収集・分析し、行動変容の進捗を測ることが可能です。これらのデータは、オンボーディング施策、配属後のマネジメント、組織開発、さらなる育成プログラムの改善に活用できます。
- ジョブクラフティングの可視化: 従業員が自身の仕事の捉え方や遂行方法を主体的に見直す「ジョブクラフティング」の取り組みを通じて、仕事への充実度や働きがいの変化を定量的に把握することも有効です。
- イグニッションマトリックスによる言語化支援: 個人のWill(意味・意義、意志)、Can(知識、スキル、経験、人脈)、Must(ミッション、方針、戦略)を言語化する「イグニッションマトリックス」を活用し、受講生の自己認識と組織への貢献意欲を可視化します。このマトリックスの変化を追うことで、研修が個人の内面にもたらす影響を捉えることができます。
- ワークヒストリーによる自己理解の深化: 受講者のキャリアの変遷や重要な出来事を記録する「ワークヒストリー」を通じて、個人の過去の経験や価値観を深掘りし、現在の行動特性との関連性を分析します。
これらのデータは、単なる研修効果の測定に留まらず、以下の具体的な活用に繋がります。
- オンボーディング施策の改善: 新入社員の特性や入社後の成長度合いを把握することで、より効果的なオンボーディングプログラムを設計できます。
- 配属後のマネジメント: 個人の特性や成長データを基に、上司が部下への適切なフィードバックや育成計画を立てる際の参考にします。
- 組織開発: 組織全体の傾向や課題をデータから抽出し、組織風土の改善や、より働きやすい環境づくりのための施策に活かします。
- さらなる育成プログラムの改善: 研修効果の検証結果を次期の育成プログラムにフィードバックし、PDCAサイクルを回すことで、継続的にプログラムの質を向上させます。
▼「個人と組織」をつなぐフィードバックループ
個人レベルの行動変容データを組織全体の人的資本データと連携させ、フィードバックループを構築することで、個人と組織の成長を継続的に支援します。
- 個人の理解深化: 教育研修を通じて、個人の状態変化を蓄積します。性格タイプ、ソーシャルスキル、ストレス感受性といった情報から、個人の特性を深く理解します。
- 組織全体の状態理解: 個人の理解が深まるほど、組織全体の状態理解も進みます。これにより、組織全体の特性や変化を正確に認識し、適切な教育研修やコミュニケーションを提供できるようになります。
- HXM(Human eXperience Management)の最大化: 人と組織を教育研修とデータで「接続」することで、HXMを最大化します。これは、従業員一人ひとりの可能性を最大限に引き出し、組織全体のパフォーマンス向上に繋げることを意味します。
▼人材育成のROIを算出し、経営層に報告する
育成投資の費用対効果(ROI)を算出し、経営層に報告することは、人材育成を戦略的な投資として位置づける上で不可欠です。以下のフレームワークを提示し、ROIの可視化を支援します。
- 育成目標とKPIの設定: 育成プログラムの開始前に、具体的な目標(例:〇〇スキル〇%向上、離職率〇%低減)と、それを測定するためのKPI(重要業績評価指標)を明確に設定します。
- コストの算出: 研修費用、人件費、会場費など、育成にかかる全てのコストを正確に算出します。
- 効果の測定: 研修前後のデータ(適性診断結果、パフォーマンスデータ、エンゲージメントサーベイなど)を収集し、KPIの達成度を測定します。
- ROIの算出: 測定された効果を金銭的価値に換算し、コストと比較することで、ROIを算出します。例えば、生産性向上による売上増加や、離職率低下による採用コスト削減などを具体的に算出します。
これにより、人材育成が単なる費用ではなく、企業価値向上に貢献する戦略的な投資であることを経営層に明確に説明できるようになります。
3.成功事例と今後の展望
多くの企業で人材育成の課題解決に成功している事例は数多く存在します。以下に、一般的な成功事例の類型をご紹介します。
▼成功事例の類型
類型1:経営計画達成を目的とした育成強化
- 課題: 中期経営計画達成に向けた若手人材の戦力化とマネジメント力強化。離職防止とマネジメントスキルの共通言語化も課題。
- ソリューション: 経営計画を起点とした教育体系を構築し、ロジカルシンキング、アクティブリスニング、アサーション、キャリアデザイン、メンタルヘルスケア、コーチング、ファシリテーション、チームビルディング、セルフアウェアネス、リーダーシップといったノンテクニカルスキルを含む研修を継続的に実施。
- 成果: 研修後には、若手社員のエンゲージメント向上と、マネジメント層の育成スキル向上が見られ、離職率の低下にも貢献。
類型2:組織文化醸成とエンゲージメント向上
- 課題: 育成文化の醸成と定着化、世代間・部署間ギャップの是正、エンゲージメント向上のためのコミュニケーション力強化。
- ソリューション: 組織課題を起点とした教育体系を構築し、アクティブリスニング、アサーション、コーチング、セルフアウェアネス、評価面談スキルなどのノンテクニカルスキルに焦点を当てた研修を実施。
- 成果: コミュニケーションの質が向上し、世代間・部署間の連携がスムーズになり、組織全体のエンゲージメント向上に貢献。
類型3:理念浸透による組織活性化
- 課題: 理念浸透の推進、理念を主体とするコミュニケーション強化、社内コミュニケーションの活性化。
- ソリューション: 理念を起点とした教育体系を構築し、パーパス基礎理論、パーパス浸透コミュニケーション、キャリアデザイン、セルフアウェアネス、リーダーシップといったノンテクニカルスキルを習得する研修を実施。
- 成果: 理念が組織全体に浸透し、従業員の理念への共感度が高まり、組織の一体感とコミュニケーションの活性化に繋がった。
▼今後の展望
人材育成は、単なる研修提供に留まらず、データドリブンなアプローチで企業の成長を支援する戦略的パートナーシップへと進化しています。
- データに基づいた人材育成・組織開発: 適性診断ツールや研修アウトプットからのデータ分析を通じて、個人の特性や成長を可視化し、組織全体の状態を理解することが重要です。これにより、データに基づいた効果的な人材育成・組織開発を可能にします。
- 実践的かつ体系的なノンテクニカルスキル研修: 現代のビジネス環境で不可欠なノンテクニカルスキルを、実践的な演習とフィードバックを通じて体系的に提供することが求められます。
- 包括的なHRソリューション提供能力: 人材育成だけでなく、人的資本経営の実践・開示に関わるコンサルティング、人材・組織アセスメント、採用支援、外国人就労支援など、幅広いHRソリューションを組み合わせることで、お客様の多様なニーズにワンストップで対応できる体制が理想的です。
まとめ
本記事では、人的資本経営時代の根幹をなす「行動変容」を促す人材育成と、その「効果測定」の重要性について深掘りしました。単発的な研修ではなく、理念、課題、経営計画の3軸に基づいた体系的な教育プログラムの構築が、真の行動変容には不可欠であることをご理解いただけたでしょう。
また、研修設計においては、実践的な演習とフィードバック、そして個人のパーソナリティと組織風土を考慮した「行動の公式」の視点が、行動変容を加速させる鍵となります。特に、現代のビジネス環境で不可欠なノンテクニカルスキル(セルフアウェアネス、アクティブリスニング、コーチングなど)の習得は、従業員一人ひとりの自律的な成長と組織全体のエンゲージメント向上に繋がる土台となります。
さらに、人材育成の効果を「見える化」するためには、育成目標の明確化とデータ活用が不可欠です。適性診断ツールや研修アウトプットからのデータ分析、ジョブクラフティングやイグニッションマトリックスの活用を通じて、個人の行動変容を可視化し、それを組織全体の人的資本データと連携させることで、人材育成のROIを算出し、経営層に報告する戦略的なアプローチが可能になります。
激変する時代を勝ち抜くためには、人材育成を単なるコストではなく、企業価値向上への戦略的な投資として捉え直すことが不可欠です。本記事でご紹介した「体系的な教育プログラムの構築」「行動変容を促す研修設計」「データに基づいた効果測定」は、貴社の人材育成を次なるステージへと引き上げるための具体的なロードマップとなります。
もはや、場当たり的な研修では、変化の激しい現代に対応できる人材を育成することはできません。貴社の経営戦略に基づき、人材を「資本」として最大限に活かすための第一歩を、今まさに踏み出す時です。
私たちはお客様の「働くに価値観を。生きるに多様性を。」という理念の実現を支援し、企業価値向上に貢献することを使命としています。人的資本経営における人材育成に関するご相談や、具体的なソリューションにご興味がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
貴社の未来を共に創造できることを楽しみにしております。